病気やケガによって病院で診察や治療を受けた場合について、その医療費の金額をあわせて年間で原則として10万円以上に達するようであれば、所得税の医療費控除のしくみを利用して、後日、税務署から納め過ぎた税金の還付を受けることが可能となっています。この場合の医療費は、納税者本人のほか、生計を同じくしている家族なども含まれますので、本人だけでは医療費が10万円に達しなかったとしても、家族の分と通算して10万円を超えるようであれば、十分にこの制度の対象となることができます。こうした医療費控除のしくみのなかで、がん検診の費用がどのように位置づけられているかですが、がん検診は病気の治療そのものを目的としたものではなく、むしろ病気の自覚がないような人が受けるものですので、一般には医療費控除の対象にはならないというのが税務当局の見解です。しかし、がん検診によってがんが発見されて、これに引き続き病院での治療を受けるといった場合に限っては、病気の自覚がある人が病院を受診し、治療に先立って検査を受けるのと同様の趣旨ととらえることができますので、医療費控除の対象に含まれるとされています。
ただし、実際に治療がはじまると、国民健康保険から高額療養費が支給されたり、医療保険から保険金が出たりといった、医療費控除とは別の名目での医療費の補てんがなされることが多くありますので、こうした補てんがあった部分については差し引くこととされています。